天空の牧場 津和野町左鐙の京村牧場を訪ねる


【京村牧場の事務所前。熟女牛の幟をもっている女性が京村まゆみさん】

 
海山食材コラボで抱腹絶倒のパフォーマンスライブの夜が明けた朝3月14日、素晴らしい天気に恵まれた。気温はすっかり春のあったかさ。きょうは津和野町の左鐙(さぶみ)地区の天空の牧場「京村牧場」訪ねる。
里山体験スタジオで嘉村さんのお母さんが用意してくださった朝ご飯をご馳走になる。自家製の煮物や漬けものを味わった。なによりご飯が美味い。どうやら一番華奢なおいちゃんが一番多く食ったようだ。ハッハッハ!!

さっそく嘉村さんが運転する四駆トラクターで出発。狭い山道を縫うように走る。山の峠越え付近はさすがに雪が残る。山肌には雪渓がみえるとはさすが中国山地。

 

 


【山口県仁保~島根県津和野町の峠越え】
 

島根県鹿足郡津和野町は町の堀に鯉が泳ぐことで知られる。これは宮本常一先生が提案したものとは後から知った。

 

 


【京村牧場の案内板。猪ではありません。牛です】
 
京村牧場は津和野町左鐙地区の山頂に広がる牧場。牧場を案内する掲示板が道路沿いに掲げられていた。あれ? 猪牧場なのか。すると嘉村さんが笑い始めた。「これって猪だよねえ。牛にはみえない」。

 

 


【天空のテラスでポーズは嘉村則男さん】
 
車は更に急こう配の林道を走り抜ける。到着してわかった。確かに天空の里。敷地には牧場や保育園、ゲストハウスなどが並ぶ。高台の際(きわ)に事務所があり、京村まゆみさんが出迎えて下さった。あら、予想していた女性とは違う。小柄で華奢で可愛い。というのも嘉村さんから聞いていたのは、牧場経営や保育園経営の傍ら町会議員もつとめるキレモノ ツワモノと聞いていた。だから熊のような豪傑な女性を想像していたのだった。事務所はまさにハングライダーで飛びたてるほどの際にある。そこに張り出したテラスに座っているのが嘉村さん。波戸から転落事故を経験するおいちゃんには足がすくむ。

 

 

【牧場はほぼ山頂にある】

 

 


【サンマローの麻呂さん。それ以上さがっちゃだめですよ】

 

事務所でコーヒーをご馳走になりながらお話しを聞いた。名刺を渡すと京村さんから「ハッハッハ!! のおいちゃんですね」と。ハッハッハ!!
平家一門のご先祖がこの地を開いて12代という。現在は肉牛の飼育と、スタッフとその子どもたちを受け入れて森の保育園を運営する。子どもたちを牧童と呼ぶ。冬は一面に広がる雪にまみれて遊ぶそうだ。ふかふかで危なくないそうだ。いいなあ、こんなところで育つ子どもたち。その子どもたちがいずれ通うはずの左鐙小学校は統廃合の問題が持ち上がっているという。京村さんたちが存続に向けて町や議会に働きかけ、あるいは移住者の受け入れに頑張っているそうだ。なんとか踏ん張ってほしい。低空飛行でも続けていればいつかは飛び立つことはできる。着水すれば再び飛び立つことは容易ではない。

さて、牛舎は伝染病予防のため立ち入りはできないが、隙間からのぞかせていただいた。いるいるデカイ~~。

帰り際に京村まゆみさんの旦那さんにお会いできた。ちょっと怖そうだけど笑うと優しそう。さすがこれだけの事業を運営するだけの風圧を持っていた。これからいい季節になる。ときにはこの高台から雲海が出現するそうだ。いつか周防大島へとお誘いをしたが、またこの地を訪ねてみたい。しかしこの呑みスケたちが来るときっと迷惑だろうなと、そう思いながら牧場を後にした。

 

 


【左鐙(さぶみ)小学校】

 

 


帰りがけに統廃合が持ち上がっている左鐙小学校を一望できる場所に車をとめた。本・支流ともダムがない日本有数の清流高津川(たかつがわ)を挟む県道189号線から眺めるこの場所が嘉村さんの大好きなポイントだそうだ。とんがり校舎でバックの森と調和した美しい校舎。児童は6人。

するとひとりの児童が校舎から飛び出してきた。グランドをひとり走りだした。気持ちよさそうだ。のびのびとした空間がいいなあ。こんないい校舎をなくすなよなあ。宮本常一先生ならなんと言うだろう。「否定的な要素からあえて肯定的な要素を拾い上げて拡げて行こうじゃないか。まだ子どもはいるじゃないか。なくすることより創ることをやろうじゃないか」。そんな声が聞こえてきそうだ。そんなことを思いながら左鐙をあとにした。

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