《キムジャンという食文化》 


韓国のキムチと言えば日本でも大変ポピュラーな食品で、日本のお新香同様、食卓には欠かせない食品の一つになっています。特に、低カロリーでビタミンなどをたくさん含む発酵食品として、たくさんの人に愛される韓国を代表する食品です。
日本では晩秋から初冬にかけて保存食として漬物作りが盛んに行われますが、韓国でも同じようにこの時期キムチ作りが行われます。特に10月の終わりから11月の中旬にかけてキムチ作りはピークを迎え、韓国の家庭では特にオモニ(お母さん)は大忙しで、この時期(行事)をキムジャン(キムチの漬け込み)と言います。この時期漬けたキムチはビニールハウスなどの栽培施設がなかったころ、厳しい寒さの冬期間野菜を摂る手段として、韓国の人たちにとって欠かせないものです。このキムジャンは、隣近所や親せき同士のオモニたちが力を合わせて作業を行います。キムチ作りの先生のお話ではアボジ(お父さん)はこのキムチ作りでは余り働かないそうです。アボジはもっぱら味見役だそうです(笑)
このキムジャンは韓国の家庭では欠かせない行事で、当日は小豆のお粥やお赤飯を作り、キムジャンに参加した人に振る舞い、チャプキ (雑鬼)を追い払うそうです。また、職場などでキムチボーナスが支給されるところもあるそうです。日本でいえば節分のような行事でしょうか。しかし、韓国の人たちにとってキムチを漬け込むキムジャンはとても大切な食文化なのです。このキムジャンは、日本の和食文化と共にユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。

 

 

《私たちの取り組み》


一昨年(平成23年)本格キムチを作ろうとプロジェクトを立ち上げました。先ずはキムチに適した白菜づくりを栽培すること、更に、キムチ作りのレシピを作成し材料を調達することなど、準備しなければいけないことが山積みでした。特に、キムチ作りの指導者を見つけることはそう簡単なことではありません、しかし、このプロジェクトを立ち上げるきっかけを頂いた方のご主人こそ、現在の民間レベルでの韓国と山口県友好の礎を築かれた方で、私たちのキムチ作りを全面的にサポートして頂けることになりました。

 

 

キムチに使う白菜は、栽培する土地の気候風土や土壌成分の違いにより向き不向きがあるようです。特に白菜の大きさや水分は実際にキムチ作りを行ってみなければ、その本質は見えてこないと考えます。やはり大きな白菜は薬味(ヤンニョム)もたくさん必要になるとともに作業性も劣ります。また、一度に食べきることも困難で、乳酸発酵しているキムチはあまり長く外気にさらすと味も変わってしまいます。従って、やや小ぶりの白菜で漬け容器から取り出したキムチは、なるべく早く食べられる大きさのものがよいと思います。私たちは3種類栽培した白菜の中から「晴黄85」という品種を選びキムチ作りに使用しましたが、この白菜は大ぶりで前述の通りやや小ぶりのものがよいと判断しました。次年度についてはやや小ぶりな「松島純二号」を選定しました。
この松島純二号はちょっとした物語がある白菜です。この頁では割愛しますが、以下のHPやフェースブックから詳細をご覧いただけます。
●みんなの白菜物語プロジェクト googleサーチより検索くださいhttps://www.google.co.jp
●Facebook:食の学人の会



《私たちのキムジャン》

私たちがキムチと言って連想するものはやはり白菜を漬けたものですが、大根を漬けたカクテギやキュウリを漬けたオイキムチ、あまり馴染みはないですが、からし菜を漬けたカッキムチなどたくさん種類があります。私たちが漬けたキムチはもちろん?白菜キムチで、今年は11月30日に漬け込みを行いました。但し、ヤンニョムの具材や白菜のあら漬けなど、あらかじめ準備することがたくさんあり、それもまた楽しい私たちにとってのキムジャンなのです。

 

☆食材調達の旅


「食材は専門店に行けば多少割高でも買い求められるだろう!」という周りの声は一蹴?一笑して、昨年に続き韓国はプサンに11月21日から23日までの3日間材料仕入れの旅にタケちゃんマンと2名で向かいました。釜山は北九州空港からわずか40分で着く外国で、何となく私たちには海外という気持ちにさせないほどの、親近感信を覚えさせる街です。目的はただ一つ?キムチの材料調達なので、ホテルは最安値のホテルをチョイス、寝るには何の不自由もありませんでした。特に交通アクセスがよく地下鉄のチャガルチ駅から徒歩数分で着くことができるホテルを利用しました。釜山市街に到着した21日午前10時から2日後の23日金海空港を飛び立つ20時まで、ただひたすら市場(マーケット)リサーチとキムチの材料仕入れを行いました。
各市場の詳細は以下の写真をご覧ください、中国旅行をした時も同様の経験をしましたが、言葉としては好ましくないですが、「食」に対する強い執着・貪欲、活力の源のようなものを感じました。まさに「医食同源」の思想が韓国にもあるように感じました。
今回の旅では唐辛子とだし汁を買い求めました。一般的に、白菜キムチはイワシのだし汁、大根のカクテギキムチはキビナゴのだし汁を使用しているようです。
私たちは白菜キムチに用いるイワシのだし汁と、カクテギ用のキビナゴ出汁を買い求めましたが、キビナゴやその他のだし汁も同時に買い求めました。用法や成分についてすべてハングル文字なので、理解するのに多少時間が必要になります。また、唐辛子については、辛味付けに使う唐辛子と色付けに使う唐辛子は、それぞれ曳き方で用途が違うので、お店の方に説明を受けながら購入していきます。但し、唐辛子はお土産店などでは販売していませんので、地元のお客さんが利用する商店での購入になるので、会話ができないと大変な思いをすることになります。もちろん?私もできないので大変でした。(笑)

                           

食材調達の様子はこちらにもありますので、ご覧ください。topic44_2013

 

《キムチ作り》


キムチ作りは11月30日に行いました。但し、白菜の仕込みやヤンニョムの具材が大量に必要になるため、当日前からその調達や準備に多忙を極めました。特に白菜の荒漬は前日の夕方16時ころから日を跨ぐ頃まで続けられ、担当したスタッフ一はこの時点で疲労のピークを迎えていたことと察します。というのも、全員がサラリーマンですので、各自、仕事を終えてからの参加になるので無理もないことだと思います。
スタッフの皆様ご苦労様でした。

いよいよクライマックス、キムチ漬け当日は20名で作業を行いました。販売目的ではなく参加したお客様がそれぞれの家庭用に思いを込めて漬け込みを行いました。もちろん、キムチ作りにもちいる白菜や大根などは体験圃場で自分たちが栽培したものを利用しました。漬ける手順や材料は以下当会HPでもご覧いただけますので、この頁では割愛させていただきます。

 

 

●クラインガルテンガルテン大富・農家楽  
URL: http://www.o-tomi.com

●漬物倶楽部
URL: http://www.o-tomi.com/report/pickles_club/pickles_club_2013/pickles_club_20131130.html

 

 

《まとめ》


今回キムチ作りを始めて2年目ですが、このプロジェクトを始めるにあたり様々な目的や思いがありました。その主な内容を項目に並べてみました。
① 「まち」と「むら」の交流促進のための体験プログラムとして
② 有害獣から比較的守りやすい農産物の栽培と産地化の可能性を探る
③ 6次産業化の可能性を探る
④ 海外の異文化に触れ、理解を進める。

既に都市農村交流の実施についてはある程度の実績や成果が得られたと確信していますが、体験プログラムについては、より「安全」で「楽しく」・「学び」や「気付き」・そして「喜び」のあるものにしたいと考えています。その様な考えの中、このキムチ作りには、「健康」や栽培する「喜び」、食べる「楽しみ」や「驚き」、更には、外国文化の「学び」や「理解」にもつながります。
また、露地作物の栽培においては、トマトや豆類のように縦に伸びるものはサルなどの有害獣からの防御が困難を極めます。その点、白菜や大根と言った背丈の低い作物はネットなどで有害獣の侵入を容易に防げるとともに、当地域においてはこれら白菜や大根の栽培期間さほどサルなどが出没しない傾向にあります。その様なことから、今後当地においてこれらの作物栽培は面積の拡大等が容易と思われ、栽培面積の拡大に伴い、農家所得が拡大するのではないかと期待しています。
更に、これら野菜について、ただ産直の直売所や市場への出荷では売れ上げの伸びと顧客の獲得には限界があります。そこで、キムチという食品に加工することで、白菜や大根などの野菜に付加価値が生まれ、農業所得の拡大につながると考えています。また、作物や加工品の安定生産を行うことによって、新たな就業者や後継者が発生し、雇用の確保はもちろん、地域の活性化にもつながると考えています。
現在は市場調査の意味もあり体験プログラムの域を脱していませんが、今後は加工施設の整備や栽培圃場の整備拡大を合わせて推進し、当地山口市仁保大富地区の特産品としてのキムチ生産を行っていきたいと考えております。
尚、このキムチ作り体験プログラムは、私達NPO法人やまぐち里山環境プロジェクトが主催する「野菜倶楽部」の体験プログラムです。キムチのほか今やブランド化した「大富ラッキョウ」や、地域の伝統野菜「仁保きゅうり」の漬物作りと合わせて1年を通した体験プログラムです。昨年、平成24年度は山口市より「山口市民活動促進事業」として採択を受け、市民活動助成事業として活動を行いました。
今後とも当大富地域に於いて、この事業が発展していくことを、自分に強く言い聞かせてこのレポートを終わります。